【オーダーメイド衣装制作】岸田 メル様『ステルケンブルク・クラナッハ』

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アニメやゲームのキャラクターデザイン、ライトノベルの挿絵などで活動されている、イラストレーター 岸田メル様よりご依頼を頂きました。

世界コスプレサミット2013にゲスト参加される際に着用する、衣装のオーダーメイド製作です。
「メルルのアトリエ」より、ステルケンブルク・クラナッハの衣装制作を行わせて頂きました。

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「メルルのアトリエ」ステルケンブルク・クラナッハ 衣装
・装飾ロングジャケット
・ボトムス用ベルト

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【設計・造形系担当者コメント】
◆ご依頼頂いた時点の問題点と解決方法
・厚みが違うであろう素材の落ち具合の問題をどのように解消するか
→表地は同色の微ストレッチシルクタッチサテンに厚めの接着新を前面に貼り、トリミング部分には合皮。
その周りをブレードで縁取る事により固さの差を少なくする。これにより裾部分の2重線の答えにもなる。

・総裏で伸縮性が少なそうなデザインですが、かなりフィットしたシルエットであること
→オーダーメイドなので、トワルチェックをしっかり行う事である程度解消する。

・センターオープンファスナーの淵の飾りは該当する大きさの資材が少ない
→パイピングコードは残念ながら無かったので、ツイストコードを手付けする方法にシフト。

・裏地がグラデーション
→ご本人にお伺いした所、光の映り込みの表現なので問題ないとのこと。

・納期まで時間があまりない
→ガントレットや小道具は制作なし、コートとベルトのみの製作にすることで、ご着用予定日に間に合うよう製作スケジュールを調整。

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◆設計
この衣装の見栄えを左右するのはボタン、グレー部分の生地、胸元のアクセサリーです。
派手で凝っているように見えますが、シンプルな部分とのバランスが良く、色も上品なものが使われているため、ゴチャつかないよう気をつけて資材を選ぶ所から始まりました。

◆ボタン
ボタンは人口石が埋め込まれた物を、一回り大きいハトメに落として接着する方法を使っています。
ボタンの傾きを防ぎ、ハードな印象を与えるので甲冑等を作る時に使う方法ですが上手く埋め込むことが出来ました。

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◆グレー部分の生地と模様
銀色の模様は最初はカッティングシートの予定でしたが、シートだと厚みが無いので見栄えが悪く、
特殊加工で玉虫色を出している下地の合皮は熱にもミシンにも弱かったため、トリミングと同じ合皮を特殊な強力接着シートを予め貼った後に切り抜き、制作しています。
身頃は着心地に配慮した生地を選び、素肌に触れる事も考えて洗濯可能な仕様にしていましたが、
見栄えを重視したこの箇所の加工により、クリーニングが非常に難しい衣装となってしまいました。

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◆ポケット
フェイクポケットです。
ここに蓋付きのポケットを作ると重さで引っ張られてウエストシルエットが崩れる恐れがありましたのでフェイクにしています。
合皮に厚みがあるので少し盛り上がってくれて、この衣装の中で一番上手く行った所だと思っています。

◆構造
全パーツに及ぶトリミングと、前後のセンターパーツにあるスリットを作るため、前後のパーツと左右のパーツを最後に合体させる、パズル的な方法で組み上げています。
正確な縫製と裁断が必要になり、パターンも相当複雑になりました。
岸田メル様はお洋服も好きだと仰られており、ハギの線や皺は正確に描かれていますので衣装でたまに遭遇する「二次元の無理」はありませんでした。
複雑なパズルを解けば正確に組み上げが出来るよ、という試される制作になりました。

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■装飾品
胸元にあるシルバーの装飾品はセンタージッパーの取っ手として制作しています。大粒のスワロを土台にはめ込み、パテで造形しました。
一点もので、原型にそのまま着色しています。

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■ベルト
コートのトリミングに使ったものと同じ合皮を使い長いベルトを縫い、クリップで留められるようにしたものです。
グラデーションが欲しかったので塗装し、ヤスリをかけて金属っぽくしています。
足にぴったり巻くとボトムが潰れてイラストと違ってしまうし、ゆるく巻くと歩いているとズレて非常に邪魔です。
イラストに近くなるよう巻き付けた後、数カ所をテープで留めると比較的安定しますが、一人で着用するのが難しい仕様になってしまいました。
センターラインを出すためと縒れを防ぐために変わった縫い方をしています。

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【パタンナーコメント】
人間一人ひとり体型が違いますので、その人の身体を美しく見せる線も「本当は1本しかない」はず!
オーダーメイドに関しては依頼者様の希望を汲んで、極力ベストの線を模索していくことを念頭に置いて取り組んでいます。
メンズということもありいつもと違う感覚で楽しませていただきました。
元の絵型(原画?)を見た時も、非常に手の掛け甲斐のある大作になりそうな予感でした。

まず生地や附属(釦やファスナー、メタル系パーツなど)の選定と2次元の絵型をどのように「着てカッコイイ」立体にするかの打ち合わせでした。
個人的に大好きなヒカリモノの合皮やメタルパーツがフンダンに盛り込まれていく流れだったのでかなり興奮気味でした。
使用資材が決まり、仕様も決まってきているところで、依頼者様のボディデータを元にトワル作成をしましたが、長めの丈だったこともありこの時点で結構な迫力でした。

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この衣裳は一筋縄ではいかず、パターンも裁断も縫製も、すべてが正確さを要求される仕様での表現でした。
またまた縫製技能士には神経を酷使させてしまいましたが、ただでさえ縫いづらい「合皮+ポリエステル薄物」の合わせ技!
さらに正確な縫い!!油断すると「ヨレ」が出てしまい、丈が長いデザインなので余計に残念な仕上がりになってしまいます・・・
が、縫製技能士がピッタリと正確に仕上げました。
とにかくこの衣裳の全体の印象を決定づけるポイントになる「合皮のトリミング仕様」これが美しくすっきりと縫われないとこの衣裳は完成しませんでした。

岸田メル様衣装製作風景1

岸田様のこの衣装は「紋」がたくさん入っていて、しかも複雑な形をしています。
「プリントにするか?」という話も出ましたが最終的に「合皮を一つ一つカット」することに決定しました。
カッターの刃を何回も新しくしながらひとつずつ・・・大変でした・・・

そして「釦」のようなパーツ。特大のハトメとメタルボタンを合体させるという通常の服では考えられない「絵型通り」のパーツが完成!
さらに「フロントファスナー」のドロップ部分もメンバーが型からこしらえました。

本当に各担当者の力を集結させての衣裳制作でした!
依頼者様も満足いただけたとの事で、大変だったのも報われますし、とてもやり甲斐のある衣裳制作でした。

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【オーダーメイド縫製担当コメント】
最初に、この生地で、と言われた時、正直驚きました。
芯が貼ってあるとはいえ、薄手のサテンに、厚みのある合皮のトリミング?!
この質感の全く違う生地同士を上手く縫えるのだろうか・・・、と一抹の不安がよぎりました。
が、実際に縫ってみると〈案ずるより産むが易し〉で、頭で考えていたよりは、順調に進みました。
それは、寸分の狂いも無いパターンと、正確な裁断の賜物です。

ただ、合皮は、直接アイロンをかけられない為、当て布をしなければならなかったり、ピンも打てないので、クリップや両面接着テープ等を駆使し、
又、縫い直しもきかない為、かなり気を遣いました。

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大変な所も多々ありましたが、とてもカッコ良く、重厚感があり、本当にイラスト通りに仕上がった衣装を見ると、それまでの苦労は吹き飛んでしまいます。

この衣装は、私が手掛けさせて頂いた中で、一番の大作。と言える作品だと思います。

満足の行く作品に縫い上がった時の喜びは、物作りの仕事に携わってきて良かった!!と心から思える瞬間です。
お客様にも喜んで着て頂けたら、この上ない幸せと感じます。

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