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【ノスプロ講座3】素材(マテリアル)について ~シルク・ポリエステル編~

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~ NO.S PROJECTと一緒に学ぶ”ノスプロ講座” ~ Comment by 店長

NO.S PROJECTと一緒に学ぶ”ノスプロ講座” 先生役は開発メンバーのパタンナー。
前回の第二回目の講座ではウール・コットンの特性について学びました。
今回はシルクとポリエステル、素材の特性についてのお話です。

【主要繊維の特徴】 Written by パタンナー
《シルク》

なかなか出会いがないですが、たま~に「これだ!」と思うデッドストックの「シルク」(2次元と運命の交差するブラウス・シルク版)に出会ったり、他の素材と混紡されていたりします。
※画像の生地は二次元と運命が交差するブラウス シルクで使用した生地の色違いです。

天然繊維の中で「シルク」だけが「長繊維」と呼ばれます。
「ウール、コットン、リネン(麻系)」は「短繊維」で、もともとは「短い縮れっ毛」である「短繊維」をねじり合わせて(機会があれば「撚糸」の項目で・・・)「糸」になっています。
「シルク」は蚕(蚕蛾の幼虫)が成虫になるために自分の口から長~い糸を吐いて繭を作りますよね。
その繭をほどいて「糸」を取り出すわけなのでず~っと繋がっていて長いから「短繊維」とは明らかに違うんです。繭一つで1500mほどだと言われています。
更にその糸の断面は三角形(っぽい)なので光が乱反射するわけです。

ただ、非常に繊細な素材です。虫に喰われやすかったり(もともと虫の口から出てきたモノですし・・・)、
水にそんなに強くない、塩素系溶剤(漂白剤など)に極端に弱かったり、糸が細くて引っかかりやすいなどなど・・・
取り扱いにはかなり気を使います。

サテンやシフォンはもともと「シルク」の生地名の一つですし、富士絹、羽二重、紬も生地として有名です。

【シルクの長所】
特有の優美な光沢がある(形状により、「途中で途切れない長い鏡面」状態)
特有の柔らかさを持つ
保温性に優れる(薄い割にはという程度・・・でも幼虫が中でヌクヌクと眠れるくらいですから・・・)

 

個人的に・・・日常的に着回そうと考えると「シルク」はないかな?「特別な時」用の服としては抜群に効果を発揮してくれると思いますけど。
手を掛けないと洗濯、保管できないので、非常に気を使います。

上に書きましたが、ホントにたまたま「あのブラウスに!」と出会えたんですよね・・・
光の当たり具合で表情を変える特有の上品な光沢、ブルンとした落ち感(あの生地は落ちるだけでなく、なんと表現していいか・・・はねっ返りがあるというか・・・)、ブラウス地に程よい中肉寄りの肉感(薄地と中肉の中間のような)、薄地のイメージがある「シルク」にしては「目の詰まった」しっかりした生地でした。
あのシルク版の二次元と運命が交差するブラウスは、実は少しだけ仕様を変えてあるんですよ。
胸フリルのギャザー分量により、布が集中するのを回避するために仕様で工夫しています。

《ポリエステル》

前に述べたように、「ポリエステル素材」と言ってもその特性や風合いは様々ですし、日々新しい機能が付与された「ポリエステル素材」が世に出てきます。
われわれが「ポリエステル」(もしくは「ポリエステルメインの素材」)を選ぶケースは、もちろん表現したいテイスト、デザインによりますが、「表面効果」であったり、「ストレッチ性」であったり、「落ち感」などなど・・・見た目がオーソドックスな、いわゆる普通の「ポリエステル」は選んでいないですね。
更に「ポリエステル」はかなり丈夫なので、商品になった時に比較的取り扱いがしやすいという利点もあります。なにせ全繊維の中でナイロンに次いでNo.2ですからね。

【ポリエステルの特徴】
軽くて丈夫(ナイロンとポリエステルは全繊維中でNO.1とNO.2)
熱可塑(ねつかそ)性(プリーツなどの加工が半永久的)
特有の落ち感を持つ(ドレープ、フレアが美しく表現できるものが多い)
シワになりづらい
光沢がある(ギャザー、フリルなどの陰影が美しい)
混紡、交織に適している(ストレッチ性などの機能を付与できる)
吸水性、吸湿性に乏しい(蒸れやすい)
染色性に乏しい(ポリエステル繊維を染めるには専用の設備が必要)

 

「ポリエステル」は様々な長所を持っているし、比較的品質が安定しているので個人的には好きです。
「リネン(麻系)」はシワになり過ぎるし(アイロンが面倒・・・私はですよ)、アクリルは温かすぎる・・・というか暑いし(これも個人的な意見です・・・体温が高いので、多分)。

なにより、生地として安定しているモノが多いので、作る側として開発の面でも、量産の面でも安心できる大きな要素です。
ちょっとだけ表面効果が欲しい時も(ザクッとした二次元と運命が交差するスカート、霜降りっぽい染め効果の猫耳ショートパンツ)。
柔らかいドレープが欲しい時も(乙女のための乗馬風パンツ5)。
タップリのフリルとシルエットの美しさを表現したい時(二次元と運命が交差するブラウス)などなど・・・

色々な「表情」を持ったしっかりした生地で、仕上がりが安心。・・・あとはお値段と相談です。
「ポリエステル」の多々ある長所を「お裾分け」出来ないか・・・と技術開発されたのが「混紡」「交織」です。

●混紡、交織
で。ほんの少しだけ述べておかなければならないのが「混紡」「交織」でしょうか。

天然繊維は前に述べたとおり、繊維のカタチはある程度決まっています。「自然の恵み」ですからね。
化学繊維は人が作っていますから、カタチをある程度自由に出来ます。
「シルク」のように長い糸の状態も可能ですし(一概には言えませんが長いのが通常)、短く細かくカットすることも可能、断面図が凹のカタチとか「井戸」の「井」のカタチとか・・・本当に色々です。

「混紡」「交織」をすごく簡単に定義づけると、
・「混紡」=文字通り「混ぜて紡ぐ」訳ですから、たとえばコットンの繊維とウールの繊維を同じ量で紡いで「糸」を作ったとします。当然出来上がった糸は「コットン50%、ウール50%」の糸になります。
・「交織」=これも文字通り「交ぜて織る」訳です。たて糸に「コットン」を通しておいて、そこに「ウール」のよこ糸をくぐらせて織ると「生地」が出来上がります。これも「コットン50%、ウール50%」ということになります。

「糸」を作る段階で混ぜるのか、「生地」を作る段階で交ぜるのか、という違いになります。
イメージとして「糸」の段階で混ぜた場合、生地全体に万遍なく「コットン」と「ウール」の性質が現れる感じ。
一方、「生地」を織る段階で交ぜた場合、縦方向(たて糸の方向)にはたて糸に使った「コットン」の性質、横方向(よこ糸の方向)にはよこ糸に使った「ウール」の性質が現れるイメージです。(このイメージは非常にバックリしていますが・・・)

基本的に原料になる繊維には長所と短所があります。
複数の繊維を合わせるということは、「短所を補う」か「長所をさらに補強する」か「別の長所を新たに追加する」ことが考えられます。

例えば、コットンとポリエステルを混ぜる場合
「ポリエステルの乏しい染色性を補うためのコットン」
「ポリエステルの乏しい吸水性、吸湿性を補うためのコットン」
「コットンの風合いを柔らかく、落ち感を付与するためのポリエステル」
「ポリエステルでさらに耐久性を強める」
「ポリエステルのシワになりづらい性質を活かしてアイロンを楽に」
という効果を狙っていると想像できます。

ちなみに、「ポリウレタン」(=ポリエステルと同じく合成繊維)という品質名を目にする機会は多いと思いますが、これはほとんど「ゴム」と同じような感覚で私はとらえています。「ポリウレタン」が2%~5%くらいが多いでしょうか。100%の中の、たったこの程度混ざっているだけでもストレッチ効果が得られます。

"乙女のための乗馬風パンツ"シリーズもポリウレタンが数パーセント含まれています。
ほんの数パーセントですが、このパンツのデザイン、シルエットにピッタリなストレッチ効果が得られます。

《レーヨン》
レーヨン(やキュプラの再生繊維)はその原料の中にコットン(の一部)が含まれています。もともと、人工的にコットンのような特徴を持った繊維を開発したくて出てきたものです。
プリントの「色のり」が良いので深みのある細部まで書き込まれた(?)大柄の生地や、ドレープ、フレアを活かしたデザインに向いています。
レーヨンを混紡、交織に使うということは「染色性」「吸湿性」「特有の落ち感」の効果を付与したいという意図が考えられます。

【レーヨンの特徴】
染色性に優れる(プリントの色のりも良い)
吸湿性に優れる(コットンの性質を引き継いでいる)
ソフトな肌触り、風合いを持つ
特有の落ち感を持つ(ドレープの表現に向く)

 

《アセテート》
今はたまにしか耳にしませんが、開発当初は「人絹(じんけん)」と言われていて、その名の通り人工的に作った「絹(シルク)」です。
シルクはその繊維(というより糸)を取り出すまでに人の手が細かくかかり(良い糸を吐かせるための綿密な蚕の世話)、更に繭から使える状態の糸に戻すのにいくつもの工程を経ていきます。
独特の優美な光沢を持ったその「絹(シルク)」は当然高価で、なんとか人の手でシルクのような糸を作り出せないか?と開発されたのが「アセテート」(あまりお目にかからないかもしれませんね)です。

【アセテートの特徴】
適度な吸湿性を持つ
シルクに似た美しい光沢を持つ
摩擦などに対する耐久性がやや低い

 

代表的な素材のみ抜粋しての、簡単な説明ではありましたが、それぞれの繊維には特徴・特性があり、デザイン、ディテール、テイスト、縫製仕様・・・いろんな要素を混ぜ合わせて考えます。
「次回のテーマは○○だから、こんなテイストでいこう」というのが決まると、デザインやディテールがボンヤリ出てきて、同時に生地も候補が出始め仕様とパターンが進み、サンプル作成。この間何度となくメンバーでチェック&確認が繰り返されていきます。
サンプルが完成するとまたメンバーで吟味して、ここで「やっぱり違うかも・・・」という可能性もありますし、「部分的に変更した方がいいか?」という場合もあります。

そんなこんなでたくさんの「関門」を通過してやっとNO.Sの生地は決まって、生み出されていくのでした・・・(^^;)

各素材の大まかな特徴をお伝えして参りましたが、いかがでしたでしょうか。
次回は、繊維から生地へ、生地が出来るまでの成り立ちについてのお話です。

前回:【ノスプロ講座2】素材(マテリアル)について ~ウール・コットン編~
次回:【ノスプロ講座4】繊維から生地が出来るまで

~ あとがき ~ Comment by 店長
シルクとポリエステルの話、いかがでしたでしょうか。

二次元と運命が交差するブラウスをデザインした時に、数あるデッドストックの生地から「このベージュをブラウスに、こっちのボルドーをスカートで」と選び抜いた生地がどちらもシルクでした。
まだこの頃は今ほど生地の知識もなく、目と指の感触と直感だけで選びましたが、最高級のシルク生地だったこともあり、山積みになった生地の中でも目を惹く色艶でした。

(初めて公表しますが、二次元と運命が交差するブラウス ベージュ(シルク)と二次元と運命が交差するスカート ヴィンテージボルドー(シルクジャカード)は、
 1mあたりウン万円のシルクです・・・デッドストックだからこその販売価格なので、当時手に入れられたお客様は本当に幸運です!)

生地の山から生地を探し出すときは、目と指の感触だけでデザインに合った生地を選び、最後に素材を確認します。
膨大な量の生地を見なければならないので、まずは目で大体の生地を判別し(大半の生地がここでふるいにかけられます)、少し気になった生地は指で触り、最後の候補までたどり着いた生地でようやく反物を広げ、色、質感、落ち感、生地が体を覆ったときの見え方の様子を確認します。

発表時にシルク版を出したこともあり、完売後もシルク生地のご要望を沢山頂きました。
沢山のシルク生地も見て参りましたが、分かったことはシルク生地もピンキリだということです。

仕入れでいつもお世話になっている「生地のことならこの人に聞け!」と言われる、生地業界に十数年携わるお兄さん曰く、

『風合い、色味、質感、肌触り、扱いやすさ、全てにおいてグッド!な化学繊維は沢山出てきてます。
 天然であることの値打ちは分かるけど、それを超える技術が日本にはあります。

 天然素材にこだわる人はまだまだいらっしゃいますし、
 僕も何度も尋ねられますが、好みもありますけど、扱いやすさを考えるとどうなんでしょうね。
 一体何にこだわっているのか・・・シルクって言った方が高く売れますもんね・・・
 
 シルク=高級素材だけれども、それもピンキリ。
 シルクよりも高価なポリエステル素材も沢山存在するんですよね。』

ポリエステルよりも見栄えの良く見えるシルク生地を使い二次元ブラウスを制作すると、販売価格が最低でも3万円以上になります。
高品質なポリエステル素材を使い、見栄えも良く、綺麗なシルエットが出て、安定供給が出来る、だったらシルクにそこまでこだわる必要は無いのではないか、という結論に至りました。

絶対にポリエステル!という訳ではありません。
その時々の需要、価格帯、何よりもデザインとシルエットに合った素材を選ぶことが、お洋服にとって一番大切です。

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